文章を書く手順その二

さて、いよいよ執筆する段階に入ります。当然必要なのが下書きなのですが、後で推敲することを頼りにしていい加減に書くのは禁物です。清書のつもりで書きましょう。推敲の際は以下の観点を忘れないようにします。①全体も部分も、課題からかけ離れていないか、②主題は言明できているか、③材料は効果的か、出所・信頼性に問題は無いか、④段落構成は主題と調和しているか、論理に飛躍は無いか、⑤結論は正しい論拠に基づいているか。これらを確認できれば、表題、書き出し、しめくくりにも注意を払います。

推論の方法を抑えておくことは、文章の読解にも必要ですし、自分で著わすのにも必須です。推論の中で中核となるのが帰納、演繹、弁証法ですが、直感や類推も推論の一種です。直感は論理的思考とは言えず、瞬時に主観で対象の本質を認識することです。客観的ではないため、学問的な議論の中では別途エビデンスを求められることも少なくありません。類推は事物や現象の明らかでない点を、類似するものから推し量ることです。いわゆる「仮説」は類推の産物であることも多く、仮説を導出した後、それを実証する必要があります。帰納法は調査や観察によって得られた事実を総合して、一般法則(得られたどの事実とも矛盾しない)を導き出すことです。自然科学は主にこの方法に依拠しています。法則の信頼性に調査量、観察量が大きく影響することは言うまでもありません。演繹法はすでに確立している普遍的法則から、個別の法則を生み出すことです。数学や三段論法は典型例でしょう。弁証法とはある命題と、その矛盾点とを総合し、新たな判断に到達することです。

文章を書く手順その一

自費出版を試みる上で忘れてはならないのは、商業出版の作品に勝るとも劣らないものを書き上げるという意気込みです。ここでは書き手として頭に入れておきたい文章術を紹介したいと思います。

執筆の契機は主題の発見であると言えます。優れた文章の背景には必ずモチーフが見え隠れします。先ずはそのモチーフをしっかり把握することから始めます。次に主題を決定します。モチーフを掘り下げ、より具体化したものを主題と呼びます。この主題をさらに掘り下げ、限定していくと、中心思想が見えてきます。そして中心思想をセンテンスに変換すれば主題文となります。主題選定の基準には、書き手の関心度、読み手への訴求性、書き手の熟知性、字数との関連性、課題との適合性、独自性等があります。主題文が出来上がると、材料を収集する必要があります。素材や資料とも呼ばれるもので、主題を有効に展開させる働きを持ちます。材料は結果的に使用しなくても構いませんから、とにかくたくさん集めればよいでしょう。収集の方法には内部検索と外部検索とがあります。内部検索とは、主題に拘らず、ブレーンストーミングしていくことであり、主題の再認識が可能になります。一方外部検索とは、主題と関連する資料を調べることです。

次の段階は「構成」です。集めた材料を取捨選択し、どう表現すれば効果的かを思索します。その主軸は「段落分け」と言ってもよいでしょう。段落とは小主題で統一された分の集合で、どの文も段落の初めに置かれるトピックセンテンスと関わっている必要があります。段落を立てる基準としては、時間、場所、話題等が変わったり、観点そのものが変わったり、引用したりする時が挙げられます。

文章を書くための工夫

スポーツや習い事と同じ様に、練習次第で文章を書く力はあがってきます。どういう練習をすればいいかというと、とにかく文章を書くことです。ブログでも日記でも、何でもいいです。日々の出来事、ニュース、それらに対する自分の意見や自分の感情等の描写を継続的に続ければ、文章を書くことに慣れてきます。 著名な作家の作品を、たくさん読むのもいいでしょう。取り入れたい表現を見つけたら、自分で何度も書いてみましょう。そのまま同じ表現を自分の本に使用することは出来ませんが、書く対象への視点の置き方、表現の仕方のコツが少しずつ分かる様になってきます。

もし、もうこれから自費出版本の原稿に挑戦する段階だという人にとっては、時間をかけて文章の訓練は難しいかもしれません。その場合は、上手い文章を書くことよりも、読みやすい文章を書くことを心がけましょう。内容が面白く、読みやすい文章ならば魅力的な作品になります。ここでいう読みやすい文章とは、誰が読んでも分かる言葉で書かれた単純な文章、という意味です。読者が敬遠してしまうような格調高い表現や難しい言葉、抽象的な表現はできるだけ控えましょう。

単純な文章を書くには、主語と述語がはっきりとわかるように、1つの文をなるべく短くします。長い文より短く分割した文の方が、リズムが出て読みやすくなります。ここで短文を並べる際、接続詞を使って繋げたくなりますが多用は控えた方が無難です。「しかし」「だから」「つまり」など、普段の会話ではよく使う言葉でも、文章で多用されると読者は気になってきます。工夫して文章を並べ、接続詞は必要な箇所にだけ使いましょう。

書く時に気をつけること

基本的なことですが、文章のルールはおさえておきましょう。 句点「。」はさほど問題ではありませんが、読点「、」はつけ方を工夫する必要があります。句点とは違い、読点には必ずここにつけるといったような決まりはないので執筆者が好きな様につけることができます。多すぎると細切れな文章になりますし、少なすぎると締まりのない印象を受けます。読点は文章にリズムをつけて分かりやすくするために、通常は文節ごとに打たれます。ですが、どのような基準で文節を分けるかは執筆者の判断となります。書きながら徐々に自分なりの文章のテンポを把握していければ、1つのリズムとリズムの間に読点を打てるようになるでしょう。

段落を変えるときは一文字空けて文章を始めます。「」で会話やセリフを入れる時は、段落を変えます。 段落はドラマや映画のワンカットと同じと捉えてもよいでしょう。長いワンカットは見る側も集中力が続きません。文章でも、1つの段落ががあまり長すぎると間延びします。段落を変えながら話題を少しずつ変化させ、読者の関心を維持させる工夫が必要です。

場合によっては文章だけでなく、写真、 イラスト、図表、データなどを挿入することもあります。 特に実用書は資料や図解などが文章以上に重要となってくると言っても過言ではありません。それらを引用した場合は必ず他所からの借用であることを明記し、出所と年月日を入れます。著作権に関してはしっかり調べて、著作権料が発生するようであれば対応します。出版社の人とよく相談して細心の注意を払いましょう。 小説でも、図や関連の地図などを入れることは可能です。挿入するなら各章の最初のページや、物語の区切りの部分などが適当です。

「想い」は一旦しまい込む

サンプルとして添付する原稿にも決まった書き方があるわけではないと言えますが、だからと言ってプロモーションになっていないサンプルを添付しても、意味がないどころか、むしろ逆効果になってしまうと言えるでしょう。

サンプル原稿を読む側としては、どのような文章を書くのか、どのようにテーマに沿って展開していくのか、といったような部分が知りたいのではないでしょうか。そのため、サンプルとして添付する原稿には、自身の想いや能書きを書かず、本題をダイレクトに伝えている部分を添付するということが大切であると言えるでしょう。

作文や手紙のように長々と想いを綴って、編集者が読みたい部分が一切見えないものは、サンプル原稿として適していないと言えるでしょう。想いを伝えたいのであれば、きちんと「原稿」として自身の意見や主張が組み込まれている部分を「抜粋」することが重要と言えるでしょう。自身の作成した企画書の内容がよく反映されている部分を抜粋し、提示する行為自体が、一番想いの伝わる方法であるとも言えるでしょう。

原稿とは別に、想いを込めてサンプル原稿を作成したがために、自身の主張や選択したテーマがぼやけてしまっては本末転倒と言えるでしょう。またサンプルがテーマに沿っていなかったり、なにがいいたいのかわからないというようなサンプルを添付してしまっては信用というものもなくなってしまうのではないでしょうか。もし能書きなどを書いてしまうと、自身の主張ではなく、第三者の主張が混ざってしまい、主軸がブレてしまう印象になってしまいます。

唐突のように思えるかもしれませんが、企画書がそれを補ってくれることを信じ、自身の原稿を自信を持って添付することが大切でしょう。

サンプルの注目点

自費出版において、サンプル原稿の添付というものは、企画が採用されるかどうかの決定に直接的に関わってくるものであると言えるでしょう。簡潔にまとめられた企画書に、魅力的な抜粋のサンプルが添付してあれば、それだけで熱意も伝わるでしょうし、何より、選考のしやすさという点で、一歩先を行くプレゼンと言えるのではないでしょうか。

サンプル原稿として添付する際、気をつけておきたい点としては、実際にどんな文章を書いているかというものがわかる部分を抜粋することや、企画の目的に沿った内容が原稿に反映された際のイメージをつかめる部分を抜粋するといったことが大切でしょう。しかし、アピールしたいからといって、サンプル原稿が本原稿並みに大量になってしまっては逆効果と言えるでしょう。時と場合によっては、本原稿から抜粋した部分をサンプル用の原稿として書き換えるというのも良いでしょう。

企画書に添えるサンプルなので、より魅力的になるのであれば、より内容が伝わるようにこちらも簡潔にまとめるという手も挙げられるでしょう。自身の文章がどういった味を持っているか、企画内容を原稿にするとどのような原稿になるのか、ということをアピールすることができれば良いでしょう。

分量としては、企画書と同じくらいの分量というように考えておけば良いのではないでしょうか。原稿のどの部分を抜粋するかは、決まりなどないようなので、出来るだけインパクトのある部分や自信のある部分などを抜粋すると良いでしょう。

企画書やサンプル原稿を読んでくれる編集者の方への心遣いが、より良いサンプル原稿を作成する鍵となるのではないでしょうか。熱意を押し付けるのではなく、自身の企画をプレゼンするために、しっかりと準備して作成することが望ましいのではないでしょうか。

魅力を感じる企画とは

文章の上手い下手でなく、内容重視である出版社の人に「魅力的だ」と感じてもらえる企画とは一体どう言ったものでしょう。政治的な内容や、世界的な流行、はたまたマニアックな企画でしょうか?

答えは、どれも間違いではないと言えるでしょう。言ってしまえばコンテンツやジャンルはなんでも良いのではないでしょうか。

大切なのは、実体験に裏打ちされた企画であるということなのではないでしょうか。または、体験まではしていなくても、実証を得られる内容であるならば良いでしょう。

つまり自費出版においては、妄想や計算と言ったように頭の中で想像し、構築した企画というものではなく、執筆者の体験にもとづいた企画であるということが大切でしょう。想像力だけで構築した企画というものは、実体験に基づいて構築された企画と比べ、圧倒的に説得力がないと言えるのではないでしょうか。

更には、何となく「それっぽく」差別化をはかってみたり、売れたいという一心で無理矢理対象の読者層を広げてみたりするならば、説得力どころか、胡散臭い企画になってしまうのではないでしょうか。実体験に裏打ちされた企画であれば、それは現実で起きた事である時点で説得力を持っており、そのような力のある企画であれば、特別な経験でなくても本として出版できる可能性があると言えるでしょう。

もちろん、一般の人にはなかなか体験できないコンテンツであればあるほど出版されやすいという事実は否めないでしょう。しかし、企画を立てる時は、自信を大きく見せようとせず、実体験の中からコンテンツを選択する事が望ましいと言えるのではないでしょうか。心から「語れる」コンテンツを選ぶ事が、自費出版への近道と言えるでしょう。

文章よりも、内容重視。

自費出版を目指す一般の方の中には、原稿を書き始める前に、まず文章の書き方を勉強しますという声を聞きますが、ぶっちゃけて申し上げると、残念ながら、文章が上手いだけでは原稿は採用されないでしょう。いくら文章が眩いばかりにうまくても、内容がない文章であれば採用されることはないでしょう。また、無理矢理に読者の対象を広げ、大勢の読者がいるという可能性をアピールしても、その企画に沿っていなかったり、ひどい場合であれば企画の良さを失ってしまっている場合にはアピールどころかマイナスイメージにしかならないでしょう。

さらには、これまでの職歴に裏打ちされた内容であっても、今までの人生の中で接したことのない対象に向けて書かれた原稿には説得力がない場合が多いようです。読者の対象を多くすることを考えて内容がイマイチという状況は、まさに本末転倒であり、本を出版する事が目的であるのか、本を出版して何かを伝えたいという事が目的であるのか、今一度自身で考えるべき点であるのではないでしょうか。

また、前2つのケースとは全く違い、根拠のない自信をアピールして採用を狙うと言ったケースも見られるようです。確かに本が売れるのであれば採用という方程式も間違いではないでしょう。自身の経験などからの自信ではなく、所謂「世の中の流行」的な観点から、これからの世界ではこのような本が売れていくというアピールばかりをするものの、肝心の企画書には「本」自体のことについて触れられていなかったりと、これも本末転倒な売り込み方であると言えるでしょう。

相手は出版のプロです。素人がいくら「売れる」と叫んでも、売れないものは採用されるはずがないでしょう。何よりも内容の充実というのが出版への第一歩といえるでしょう。

売り込む技術

共同出版をすすめられるということは、逆に考えれば、その原稿に、多少なりとも裏付けのされた「魅力」が見え隠れしているからであるとも言えるでしょう。もちろん、なんの魅力も感じられないものは共同出版すら勧められないのは当然でしょう。

現時点で、その見え隠れしている「魅力」をはっきりと見えるものとして原稿に収めることと、売り込むための企画書に知らしめる作業が必要であると言えるでしょう。

はっきり言って、出版社に送られて来た原稿そのままで採用される原稿などは、ごくごくごくごく稀な存在であり、それこそ無いに等しい可能性であると言えるのではないでしょうか。けれど、読み込んでみると、実体験に裏打ちされた「魅力」が隠されている事は少なくないと言えるでしょう。その隠された可能性を、目に見える可能性として表現していく事が重要なのではないでしょうか。

自費出版において「魅力」を売り込むためには、売り込むための「表現」というものを学ぶ事が必要であると言えるでしょう。そのコツさえつかめば、隠れていた可能性はどんどん広がり、採用される確率も大きく上がると言えるのではないでしょうか。編集者にとって、文章の上手い下手は関係ない要素である場合が多く、見ているところは着眼点であったり、解釈であったりがほとんどです。もちろん文章がうまいにこしたことはないでしょうが、しっかりとしたテーマをわかりやすく掲げ、自身の考えを客観的にまとめ上げると言った点を明確にする事が、売り込む技術としては重要であると言えるのではないでしょうか。

何事も内容が重要です。下手な文章でも、伝わるものは伝わると信じ、内容がわかりやすい原稿を書く事を心がける事が望ましいでしょう。

共同出版の罠

近年、本を出版したいと希望する一般の方の増加から、広く一般で原稿を募集するといった出版社も増えているのではないでしょうか。

しかし、そういった出版社に原稿を送ったところで、ほとんどの返信は決まりきっていると言っても過言ではないでしょう。それは、共同出版のお知らせでしょう。そう言った事案の増加から、よく耳にする質問も増えて来たのではないでしょうか。

それは、「一般から原稿を募集している出版社に原稿を送り、素晴らしいと誉められたのにも関わらず、自身も出資しなくてはならない共同出版を持ちかけられるとはどうしてなのか」と言った内容がほとんどでしょう。

そもそも、一般から原稿を募集する出版社は、執筆者と出版社が費用を折半する方法である「共同出版」や、執筆者が出資して出版する方法の「自費出版」を専門に取り扱っているとされているため、そういった出版社に原稿を送っても、費用を全額負担してくれるという希望は無いに等しいと知っておくべきでは無いでしょうか。

「素晴らしい」と誉められたのは、半分はリップサービスであると言えるでしょう。その証拠に、費用は折半という提案がなされます。本当に素晴らしいと思う原稿であれば、他社に渡したく無いため、全額負担で出版してくれるのではないでしょうか。自費出版の提案に関しては罠とは言いませんが、共同出版に関しては、本が売れた場合は出版社が得をし、売れなかった場合は執筆者が多大なる負担を背負う構造になっている事がほとんどと言えます。

甘い言葉に騙されず、しっかりと現実を受け入れる事が大切でしょう。だからと言って諦める必要はなく、自身の原稿と向き合い、高めて行く努力が必要と言えるでしょう。